
当時17歳の青年であったセシル・ローズ氏は、ダイヤモンドを求めてアフリカ大陸へ渡った一人でした。ローズ氏は、キンバリーで農場を営むデビアス兄弟の土地でダイヤモンドを探し始めましたが、次第に彼の仕事は、採掘鉱から出る大量の水汲み出す排水パイプの工事を独占的に受注するようになりました。
彼は、その事業で得た資金を元に、次々とダイヤモンド採掘鉱の買収を始め、1881年、ロスチャイルド(ユダヤ系)資本の後ろ盾によりデビアス鉱山会社を設立し、その後当時最大のライバル企業であったキンバリー鉱山も買収し、更にウェッセルトン、ヤーガースフォンテインなどの鉱山群を買収し続け、ローズ氏率いるデビアス社は、19世紀末には、当時知られていたダイヤモンド生産地の9割以上を支配するようになりました。
ドイツ系のユダヤ人アーネスト・オッペンハイマー氏は、1917年に金生産企業のアングロ・アメリカン社を設立、次いで、南西アフリカで発見されていたダイヤモンド漂砂鉱床を入手して、コンソリデイテッド・ダイヤモンド・マインズ社を設立し、ダイヤモンド業界に進出しました。そして、ローズ氏の死後、1930年、オッペンハイマー氏は、デビアス社を買収し、会長に就任するや、現在のダイヤモンドビジネスの基礎となる緻密で精巧なシステムを築き上げました。それは、ダイヤモンド生産の主要業者を支配し、価格統制と在庫調整を図る仕組みのものでした。
ダイヤモンド原石が、デビアス社から世界中のダイヤモンド業者に渡るのは、中央販売機構が主催する「サイト(提示)」と呼ばれる場で、主にロンドンで開催されます。デビアス・グループの市場コントロールの象徴とされているのが、年10回ほど開かれるこの「サイト」で、そこに参加できる「サイトホルダー」と呼ばれる業者(現在80社ほど、日本では田崎真珠のみ)との売買システムです。
原石の供給を受けるサイトホルダーは、デビアス社が独自に認定し、そこに参加する際、各サイトホルダーは、事前に要求をダイヤモンドの種類別に提出しますが、この希望はあくまで買い手側の希望であって、完全に要求通りの原石を購入することはできません。なぜなら、サイト当日、世界中から集まったサイトホルダーは、個別に中央販売機構の担当者と面会し、ダイヤモンド原石の入った袋を提示され、「買う」か、「買わない」かの選択しかないからです。(袋の中身の選別も交換も一切認められません)
値段も中央販売機構側の提示に従わなければなりません。提示された袋には、無色透明の高品質のダイヤ原石から、それよりも品質の劣る褐色を帯びた原石も含まれています。(現在はやや買い手側に有利な条件も付け加えられているようです)
このようなシステムに抵抗した一人にハリー・ウィンストンがいました。1950年代〜1970年代までの20年間に、デビアス社に対して四度抵抗し挑戦しましたが、その直後からデビアス社から配給されるダイヤモンドの量と品質が落ち始めあきらめざるを得なかったようです。
逆に、デビアス社への激しい憎悪をバネに、成功した人物もいます。旧ソ連南部、ウズベキスタンの首都タシケントに生れたレビエフ氏です。彼も、かつてデビアス社の「サイトホルダー」の一人でしたが、デビアス社の高慢で高圧的なビジネスのやり方に怒りを募らせてきました。そのデビアス社に対する激しい憎悪が、今日のレビエフを育て上げるバネとなり、やがてデビアス社の支配を揺るがす存在と成長しました。
それは、金額ベースで世界最大級のダイヤモンド生産地であるロシアとアンゴラからの仕入ルートを構築し、デビアス社を徐々に包囲しているからです。それを見て他の生産会社も、デビアス社の支配に屈しないレビエフのやり方に追随するようになりました。
例えば、オーストラリアのアーガイル鉱山を所有する「リオ・ティント社」は、1996年、4,200万ctの原石を、初めてデビアス社を通さずアントワープの研磨業者に直接販売しました。また、ロシア政府は1990年の当初より原石の一部を他の業者に販売するようになり、カナダ政府は、デビアス社を特別扱いしませんでした。
このように、デビアス社の威信が低下し、“デビアス離れ”が急速に起き、同社のダイヤモンド市場のシェアは、数年前の90%から現在は、40~50%以下に縮小しています。
レビエフ氏は、ダイヤモンドの産出国と直接交渉し、世界最大のダイヤモンドのカット加工・研磨事業を支配し、世界中のカット加工業者、研磨業者、ジュエリーメーカーに原石を供給した上、小売まですべての分野に進出して利益を上げています。
彼は、デビアス社の支配に挑戦することで、巨額の富を築き上げることに成功しました。また、同氏は、敬虔なユダヤ教徒で、ロシアと旧ソ連に住むユダヤ人の信仰と民族の伝統を取り戻すため、多額の寄付をしています。
また、レビエフ氏は、ロシアのプーチン大統領を始め、シャロン・イスラエル首相、サントス・アンゴラ大統領、ヌジョマ・ナミビア大統領など、ダイヤモンド産出国の多くの指導者と親交を深め、彼らの信頼を得ています。そして、このように広い地域で構築したコネクションを通じ、ダイヤモンド原石の安定した供給を確保して、デビアス社と対抗しています。
2000年に入り、ダイヤモンドを採掘するロシアの国営企業・アルロサ社(ロシア連邦・サハ共和国ダイヤモンド生産採掘企業)が急速に台頭してきました。同社は、ロシア連邦大統領令にもとづき設立され、資本構成は、ロシア連邦政府が37%、サハ共和国政府が32%、その他ダイヤモンド関係企業および従業員となっています。
アルロサ社は、サハ共和国予算の70%を賄う最大手企業であります。ダイヤモンドビジネスは、ロシアでの先導的な位置を占めており、長期間にわたる国際市場での活動を通じて、ロシア連邦においての重大な税収源となっております。そして、ダイヤモンドビジネスに携わる労働者の雇用の確保を維持し、ロシア連邦における産業の発展に大きく貢献しています。



